人的資本開示改正で求められる人事データ管理とは?有価証券報告書対応のポイントを解説

有価証券報告書の開示について、人的資本を中心とした重要な改正が行われています。


領域

内容

適用

従業員の状況・人的資本

有報の開示項目見直し

20263月期から必須

総会前開示の簡素化

開示タイミングの前倒し

適用開始済み

サステナビリティ開示(SSBJ基準)

戦略・KPI開示

任意(早期適用可)


なかでも人的資本関連の改正では、「従業員の状況等」が新設され、人材戦略や従業員給与・報酬の決定方針、平均給与の前年比増減率などの開示が求められるようになりました。

また、従来の数値中心の開示に加え、企業戦略と関連付けた人的資本や人的資本投資について説明することが求められています。

本記事では、20263月期から適用された有価証券報告書の改正内容を中心に、実務上のポイントを整理します。

目次

1. 「従業員の状況等」の新設

2. 改正の背景

3. 開示内容の具体像

4. 「最大人員会社」の定義

5. 実務上のインパクト

6. 実務対応で特に難しいポイント

7. その他の主な改正内容(概要)

8. CHROFYの取り組み

1. 「従業員の状況等」の新設

今回の改正により、「提出会社の状況」の中に、新たに「従業員の状況等」が設けられました。

ここには、人材戦略や従業員給与・報酬に関する情報など、人的資本に関する開示項目が集約されます。

これは単なる項目追加ではなく、従来分散していた人的資本関連情報を統合して示すことを目的としています。

2. 改正の背景

本改正は、20256月に金融庁が公表した「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクションプラン2025」を受けたものです。

この中で、人的資本について以下の方向性が示されました。

  • 人的資本への投資に関する開示の充実
  • 従業員給与・報酬に関する記載事項の集約
  • 以下の新規開示の追加
    • 企業戦略と関連付けた人材戦略
    • 従業員給与・報酬の決定方針
    • 従業員給与の平均額の前年比増減率 等

これを受けて開示府令が改正され、20263月期の有価証券報告書から適用されています。

3. 開示内容の具体像

今回の改正では、人的資本に関する情報開示の充実に向けて、主に以下の3つの開示項目が追加されました。

■ ① 企業戦略と関連付けた人材戦略

👉 連結会社ベースで開示

  • 経営戦略との紐づけが必須
  • 人材ポートフォリオ・育成・配置などを説明

本項目は、連結会社全体としての人材戦略を示すことが求められているものであり、連結会社を構成する個々の会社ごとに「人材戦略」を個別記載する趣旨ではありません。

■ ② 従業員の給与・報酬の決定方針

👉 原則:連結会社
👉
選択:提出会社(持株会社は提出会社+最大人員会社)

  • 報酬体系・評価制度との関係
  • 人材確保・競争力との整合

本項目については、提出会社が連結会社全体の報酬方針に必ずしも関与していないケースも想定されるため、実務負担への配慮として、提出会社(または提出会社+最大人員会社)のみに限定して開示することも可能とされています。

■ ③ 従業員給与の平均額の前年比増減率

👉 人的資本投資の結果指標

  • 単年数値ではなく、賃上げ・人的投資の変化を示す指標
  • 賃上げ・投資姿勢の可視化

■改定後の有価証券報告書のイメージ

これらの改正を踏まえ、有価証券報告書に新設された「従業員の状況等」の記載イメージは以下のようになります。

(財務会計基準機構 有価証券報告書の作成要領より抜粋して加工)

4. 「最大人員会社」の定義

前章で触れた「最大人員会社」とは、以下の会社を指します。

  • 国内連結子会社のうち従業員数最大の会社
  • 過半数未満の場合は上位2

👉 グループの実態を反映するための概念


5. 実務上のインパクト

今回の改正により、人的資本開示の考え方は大きく転換しています。

  • 単体開示グループベースでの開示
  • 数値中心戦略+方針+KPIを含む開示
  • 項目の記載説明責任

従来は従業員数や平均給与などの数値開示が中心でしたが、これまで以上に企業の人材戦略や人的資本への投資方針、その成果についても説明することが求められるようになりました。

6. 実務対応で特に難しいポイント

実際の開示対応では、以下のような実務課題に直面する企業も少なくありません。

  • グループ横断データの収集
  • グループ会社間での指標定義の統一
  • 人材戦略と開示数値の整合性(なぜその数値なのか)
  • 開示スピード(総会前対応)

7. その他の主な改正内容(概要)

人的資本以外にも、今回の改正では以下の点が見直されています。

■ 総会前開示の促進

  • 決議事項の記載が簡素化(配当・自己株式取得を除く)
    👉
    有価証券報告書の前倒し提出が現実的に

■ サステナビリティ開示の体系化

  • ガバナンス/戦略/リスク管理/指標と目標の枠組みで整理
    👉 SSBJ
    (サステナビリティ基準委員会)の基準との整合を意識した構造へ

当面は任意適用(早期適用可能)、将来的に本格適用見込み

■ 株主情報開示の柔軟化

  • 半期報告書における大株主情報を中間基準日ベースでも開示可能

8. CHROFYの取り組み

今回の改正により、グループ横断でのデータ収集や指標定義の統一、早期開示への対応など、人的資本開示に関する実務負荷は今後さらに高まることが見込まれます。

こうした制度改正を踏まえ、CHROFYでは現在、有価証券報告書における「従業員の状況」関連指標の自動集計機能を企画・開発中です。

対象項目:

  • 従業員数/臨時従業員数
  • セグメント別人数
  • 平均給与
  • 平均勤続年数
  • 平均年齢
  • 平均給与の対前年増減率

こうした環境変化を踏まえ、 いつでも同じロジックで出せる状態の構築が重要になっています。CHROFYでは、これを実現することで、人的資本開示に必要なデータ集計・管理業務の効率化を支援していきます。

まとめ

今回の改正は、

👉 「人的資本データを戦略として説明せよ」というメッセージ

です。

そのためには、

👉 基礎データ(従業員の状況)を正確かつ一貫して管理できるか

が、企業の開示力を左右するポイントになります。

<参考URL

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